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Prolog


 かねてから Ms.S と中央アジアの国々を一度旅してみようと話していたが、なかなかその機会がなく、実現していなかった。

 今年は観光客による自然破壊が進みつつあって、遠からず訪れることができなくなるかもしれないといわれている世界遺産の島、ガラパゴス島へ、上陸が可能なうちに出かけようと考えて準備をしていたが、先回南米の旅で利用した旅行社から西安〜ローマ12000キロを完全走破する『シルクロード74日間の旅』 というパンフレットが送られてきて、大いに興味をそそられ、急遽予定を変更して出かけることになった。

 『シルクロード』という言葉は私たちにも馴染み深いものだが、私自身正確に理解しているとは言いがたいので、この機会に少しおさらいをしてみた。

  『シルクロード』は、太古よりユーラシア大陸の大動脈として、アジアとヨーロッパの国々をつないできた交通路の総称で、さまざまな人々がさまざまな目的で行き交い、その結果としてこのルートを通って、多くの文化や産物が日本を含む多くの国々へと伝播していった。 

 この『シルクロード』という名称が使われ始めたのは意外に新しく、長澤和俊氏の著書「シルクロード入門」によると、初めてその名称を用いたのはドイツの地理学者リヒトホーフェンで、彼が1877年に上梓した著書「中国」の中で、紀元前114年から紀元127年にかけて、中国と西トルキスタン、西北インドとの絹貿易を取り結んだ中央アジアの交易路を「ザイデンシュトラッセ(Seidenstrasse = Silk Road)」 と記述したことが始まりだという。

 ところがその後、東西交流史の研究が進むにつれ、『シルクロード』の概念は次第に拡張されてゆき、今では中国から中央アジア、西アジアを経て、イスタンブルやローマに至る交易ルート全体を指すようになり、さらにはユーラシア大陸北方のステップ地帯を通る「ステップ路」や、インド、東南アジアを迂回する「南海路」もそれに加えられるようになっている。 つまり『シルクロード』には大きく分けて、3つのルートがあるということになる。

 =三つのシルクロード=

 オアシス路
  一つ目は考古学的にはもっとも古くから東西の文化交流があったと認められている、長安から敦煌、カシュガル、西アジア、さらにはローマへと続く中央アジアのオアシス地帯をたどるキャラバン・ルートの『オアシス路』である。  この長安からローマに至る約12000キロのルートは狭義のシルクロードとして知られており、今回の私たちの旅は、基本的にこのルートを辿ることになる。

 北緯40度付近を東西に結ぶこのルートは、沙漠の中を行く道で、中央にパミール高原があるが、東西のトルキスタンの沙漠にはオアシスが多く、水のある場所を次々と結んで、旅をすることによって出来上がった。 中央アジアの数多くの民族、ソグド人、ウイグル人、サルト人などがこのルートを利用した。

 ステップ路
  二つ目は文字に書かれた記録としてはもっとも古い騎馬民族たちが利用した北方の草原地帯を走る『ステップ路』である。

 北方の『ステップ路』は、北緯50度付近を東西につなぐ草原の道で、この地帯はアジアでもヨーロッパでも、太古から遊牧民の活躍の舞台であった。 スキタイ、匈奴、突厥、モンゴルなどの騎馬民族がその機動性を活かしながら、南方の農耕民や東西の異民族間で、平和時には交易を、まだ動乱時には略奪や侵略を行った。

 南海路 
  絹は「ステップ路」や「オアシス路」などの「陸のシルクロード」の他にも、複数の海上ルートによっても取引された。 中国の広州から東南アジアを経て、インドの南、ペルシャ湾、紅海をつなぐ「海のシルクロード」とも呼ばれる『南海路』だ。 

 東南アジアを回って漢とローマを結ぶ交易路はかなり古くから開けていて、とくに16世紀以降、ヨーロッパ人のインド洋進出によって、世界的規模の東西交易のメインルートとなった。 

 南北路
  東西を結ぶ3本のシルクロードは、それぞれにかなり遠く離れていたが、それぞれのルートの主要都市は、他のルートの都市と結びついていて、それが南北を結ぶいくつかの道となっていた。

  『シルクロード』は、交易の道であったと同時に、征服者が往来した道でもあったので、このように複雑なルートが出来上がったと考えられている。 これら網の目のように入り組んだルートの総称が『シルクロード』ということなのだ。

  『シルクロード』は、永きに渡って東西の都市や国々を結ぶ交易路の役割を果たしたが、同時に多くの国がその版図の拡大を狙って、アレクサンドロ大王やチンギス・ハーンに代表されるような征服者たちが往来した道でもあった。 さらには東西の文化交流にも大きな役割を果たし、正倉院の宝物の中に遥かペルシャからもたらされたものもあり、奈良が『シルクロード』の東の終点だと言われるゆえんともなっている。 

  さて、明日から私たちの74日間にわたる『シルクロードの旅』が始まる。 そこにあるさまざまな自然や人々の暮らしを、かつてのシルクロードを辿りながら見てきたい。 

 ('08.08.31) 

「シルクロード12000キロ完全走破74日間の旅」へ    

    

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